はじめに
コピー機や複合機、プリンターを導入したものの、いざ帳簿つけになると困ってしまったことはないでしょうか?
勘定科目の決め方も迷う時があり、後回しにしてしまう時もあるはずです。
また契約形態と用途での違いも気になりますね。
しかしながら、期中には毎日帳簿つけをしなくてはならないし、決算が来れば財務諸表に記入することになります。
そもそもこれらの費用は経費として計上できるのでしょうか?
今回の記事では「リース」「レンタル」「購入」の3つの契約について、複式簿記での仕訳と勘定科目、考え方を解説をしていきます。
それではまずはじめに契約形態について解説をしていきますね。
コピー機や複合機、プリンターの契約形態
結論からいうとコピー機や複合機、プリンターに関する出費は、経費として計上できる部分があります。
といっても、これらに関しては契約形態が様々で、各契約で勘定科目が違ってくる。
ここでは、以下の3つの契約について解説していきます。
レンタル
固定資産を一定期間借りるのはリースと同じです。
レンタルは短期間や長期間と借りられる幅が広いことが特徴。
購入
コピー機や複合機、プリンター直接を買うことです。
リース
リース物件である固定資産を、決まった期間に渡り貸し手から借りる契約です。
リース物件を買ってローンで支払う処理とほぼ同じで、リース期間終了後に買い取る契約も選べます。
固定資産とは、この場合はコピー機や複合機・プリンターなどの機器のことです。
リース契約の勘定科目について
リース契約はさらに2つの契約形態に分かれます。
それが「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」です。
勘定科目も違いますので、忘れずチェックしておきましょう。
ファイナンス・リース
ファイナンス・リースでは、リース期間も長く、原則として途中解約ができないことが特徴です。
期間中の修理などのメンテナンス費用は自社で負担し、以上の2つの条件を備えています。
勘定科目は「リース料」です。
このファイナンス・リースも細かく分けることができます。
一番多い契約形態が「所有権移転外ファイナンス・リース」で、リース期間が終われば機器を返却するというものです。
この場合の仕訳は、取得時に「リース資産」で、毎月の支払いは「リース債務」で計上して、決算時には「減価償却」します。
いずれも仕訳票の左側で、「経費」として計上できるものです。
一方で、、リース期間が終わったら機器が借り手のものになる契約は「所有権移転ファイナンス・リース」です。
リース期間中は同じように会計処理をしますが、リース契約が終わった後の機器は「費用」ではなく「固定資産」に変わりますので、資産としての処理をします。
オペレーティング・リース
オペレーティング・リースは、ファイナンス・リースの条件を満たさない契約で、借り手にはリース期間中のメンテナンスの責任もありません。
借りているだけというイメージで、勘定科目は「賃借料」となります。
※例外として、リース契約を「消耗品費」で計上できる場合があります。
契約期間が1年以内、あるいは総額300万円以下、といった場合です。
このような可能性があるなら、いちど税務署に相談するのが良いでしょう。
リース時の具体的な勘定科目例とは?
中小企業の場合は、支払ったリース料をそのまま勘定科目で仕訳するのが普通です。
○15,000円のリース料支払いが、普通預金から支払われた時の仕訳
借方 |
貸方 |
リース料 15,000円 |
普通預金 15,000円 |
そうでない場合、本来はファイナンス・リース契約については売買取引に準じた会計処理をします。
- 契約開始時:リース物件を使用する権利を「リース資産」とし、リース債務を「リース負債」で計上
- 期中:リース料支払い時に、借方「リース負債」「支払利息」を、貸方に「普通預金」や「当座預金」などの支払い方法を仕訳
- 決算時:リース資産に対する減価償却費、リース負債の短期と長期振替を行う
それでは次のところではレンタル契約についての話をしていきます。
レンタル契約の勘定科目について
レンタル契約の勘定科目は「賃借料」です。
契約にかかる費用は、一般的にレンタル料のみで、月額のレンタル料を「賃借料」として処理すれば良いのです。
レンタル時の具体的な勘定科目例はこうなります。
○25,000円のレンタル料を支払い時の仕訳
借方 |
貸方 |
貸借料 25,000円 |
普通預金 25,000円 |
それでは次に購入の場合を見ていきます。
購入契約の勘定科目について
購入なら、機器は「固定資産」となります。
購入金額によって勘定科目は変わるのでここでしっかり確認しておきましょう。
複合機やプリンターの勘定科目の分岐点は、購入価額10万円です。
10万円未満なら、消耗品費か販売管理費で一括計上でき、決算時の減価償却の手間がいりません。
10万円以上だと、購入時に「工具器具備品」で仕訳し、決算時には耐用年数5年で減価償却します。
これについては固定資産税となることは注意です。
中小企業では、30万円未満が消耗品費にできることがあります。
購入時の具体的な勘定科目例とは?
では具体例で見ていきましょう。
購入ですから、固定資産台帳にも忘れずに記入しなくてはなりません。
また10万円以内で取得購入した場合は、購入時に一括で処理します。
10万円以内での購入
購入時に一括で処理できます。
○90,000円のプリンターを購入して、現金で支払いした場合の仕訳
借方 |
貸方 |
消耗品費 90,000円 |
現金 90,000円 |
10万円以上20万円未満で購入
この場合、個別の減価償却を行わずに「一括償却資産」としたうえで、価額の3分の1を必要経費にして、毎年計上、3年かけて均等償却を行います。
○180,000円のプリンターを購入して、現金で支払いを行って、均等償却を行う場合の仕訳
購入日
借方 |
貸方 |
一括償却資産 180,000円 |
現金 180,000円 |
決算仕訳
借方 |
貸方 |
減価償却費 60,000円 |
一括償却資産 60,000円 |
決算仕訳では、3年間同金額を計上し、期中の取得であっても減価償却の月割り計算は不要です。
20万円以上30万円未満での購入
○280,000円のプリンターを購入して、現金で支払いを行い、少額減価償却資産の特例適用時の仕訳
購入日
借方 |
貸方 |
工具器具備品 280,000円 |
現金 280,000円 |
決算仕訳
借方 |
貸方 |
減価償却費 280,000円 |
工具器具備品 280,000円 |
30万円以上の購入
大型複合コピー機の価格は30万円以上になることが多く、耐用年数5年で減価償却をする必要があります。
減価償却に2通りの方法がありますが、任意で選択して処理すればいいことになっています。
その2通りの方法は「定額法」と「定率法」です。
定率法に決めたら、あらかじめ税務署に申請届を出さなくてはならず、許可が必要です。
しかし、個人事業主なら定額法が一般的ですのでその必要はありません。
では定額法、定率法での処理を順に説明します。
1,000,000円のプリンターを購入して定額法で減価償却
定額法償却率は「0.2」で、残存価格は取得価格の10%で計算します。
大型複合機コピー機を100万円で購入した場合の計算式は以下になります。
(取得金額100万円-残存価格10万円)×0.2=18万円
1年間に償却出来る金額は、18万円になります。
5年で残存価格は10万円です。
*年度途中での購入初年度は、使用した月数÷12ヵ月(1年間)の数値を掛けます。
3月決算の事業者が9月7日に収得して、直ぐに使い始めた場合は、使用期間は6ヵ月になり、18万円×0.5=9万円が初年度の減価償却出来る金額になる。
起点になるのは購入日ではなく、利用を始めた日です。購入が9月7日でも、利用開始日が10月1日になった場合、18万円×5/12=7万5千円になります。
決算仕訳
借方 |
貸方 |
減価償却費 180,000円 |
工具器具備品 180,000円 |
○1,000,000円のプリンターを購入して定率法で減価償却
定率法償却率は「0.5」です。
大型複合機コピー機を100万円で購入した場合は、
- 1年目 100万円×0.5=50万円
- 2年目 50万円×0.5=25万円
- 3年目 25万円×0.5=12万5千円
- 4年目 12万5千円×0.5=62,500円
- 5年目 62,500円×0.5=31,250円
償却出来る金額は年数によって変わり、5年で残存価格は31,250円になります。
1年目の決算仕訳
借方 |
貸方 |
減価償却費 500,000円 |
工具器具備品 500,000円 |
2年目の決算仕訳
借方 |
貸方 |
減価償却費 250,000円 |
工具器具備品 250,000円 |
3年目以降は、2年目と同じようにし、5年目まで繰り返します。
印刷に関わる3つの経費とは?
ここから、周辺の経費をみていきましょう。
インク代や搬入費用、コピー用紙はどう仕訳けるのでしょうか。
機器本体以外の経費は以下の3つに分かれます。
- 消耗品費
- 事務用品費
- 修繕費
機器の保守にかかるのが修繕費です。
わかりにくいのがあとの2つなので、国税庁の資料を確認してみましょう。
それによると、” 消耗品費は使用可能期間が1年未満、もしくは本体価格が10万円未満のもの”が該当するとなっています。
そこで、事務用品費の方は特に事務を目的としたもので良いようです。
参考:帳簿の記載の仕方 国税庁
インク、トナーは使用期限があるので消耗品費で良いでしょう。
用紙は期限がなく事務目的に使われるので、事務用品費となります。
印刷経費の勘定科目について
リース、レンタルの勘定科目も確認しましょう。
リースした場合
カウンター料金は、すべて消耗品費で計上します。これは、リース料と別に支払います。
○20,000円のカウンター料金払いが、普通預金から支払われた時の仕訳
借方 |
貸方 |
消耗品費 20,000円 |
普通預金 20,000円 |
もし、コピー用紙を事務用品費で計上しているなら、カウンター料金も事務用品費にすることもあります。どちらでも問題ありません。
レンタルした場合
レンタルサービスの内容により、別途費用が掛かる場合は計上します。
購入した場合
○20,000円のトナーを、現金で購入した時の仕訳
借方 |
貸方 |
消耗品費 20,000円 |
現金 20,000円 |
○コピー用紙代として、5,000円を現金で購入した時の仕訳
借方 |
貸方 |
事務用品費 5,000円 |
現金 5,000円 |
終わりに
さてここまで、複合機やコピー機の仕訳と勘定科目についてどこよりも詳しく解説をしてきましたがいかがだったしょうか?
「リースかレンタルか購入か?」
それぞれ契約形態が違うと、勘定科目もだいぶ違うことがわかりました。
また減価償却の条件も異なっていることもわかって頂けたと思います。
こういった経費を間違いなく計上し、節税のメリットを享受することがポイントではないでしょうか。
さて私どもではこういったコピー機や複合機の疑問点や注意点について無料相談窓口を設けています。
どなた様も気軽にご相談を頂けると幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。